結論から言うと、シンガポールで起業して住みたいならEntrePassが最適解です。EPと違って給与要件はゼロ。代わりに「ベンチャー資金調達」「知的財産」「アクセラレータ参加」「政府機関のサポート」のいずれかで、ビジネスの将来性を証明します。
シンガポールはASEAN最大のスタートアップハブで、Sequoia・Y Combinator・SGInnovate などのアクセラレータも進出済み。Wise・Carousell・Grab といった有名スタートアップを生み出した土壌があります。私自身もシンガポールで起業した友人を何人か見ていて、「EntrePass のおかげで日本では考えられないスピードで動けた」と聞きます。
ここからは、EntrePass の4つの資格カテゴリ、必要書類、更新条件、Tech.Pass/ONE Passとの違いまでまとめます。
EntrePass の4つの資格カテゴリ|どれかに当てはまればOK
EntrePass は4つの資格カテゴリのいずれか1つを満たせば申請できます。複数満たす必要はありません。
① Entrepreneur(起業家)
過去に他社で大きな起業実績があるか、現在シンガポール会社でVC等から資金調達を受けている人が対象。具体的には:
- シンガポール会社が過去半年以内にS$100,000以上の資金調達を完了している
- もしくは申請者本人が政府認定アクセラレータ(SGInnovate、Block71、JTC LaunchPad など)に参加中
- もしくは申請者本人が過去に上場企業の創業者だった、または同等の実績
② Innovator(革新者)
知的財産(IP)か、研究機関との共同研究を持つ人。
- シンガポールIPOS(特許庁)か他主要国の特許庁に登録された特許・商標を持つ
- シンガポールの大学・A*STAR等政府研究機関と共同研究契約を結んでいる
- 申請者の専門分野での研究実績(論文、表彰歴)
③ Investor(投資家)
過去にスタートアップ投資の実績がある投資家。
- 過去に複数スタートアップへ投資した実績
- シンガポール会社の取締役またはアドバイザーとして参画
- VC・PEファンドの運営者としての経験
④ アクセラレータ・政府サポート系
シンガポール政府認定のスタートアップ支援プログラムに参加することで資格を得るルート。
- SGInnovate Founders Programme
- Block71 アクセラレータ
- JTC LaunchPad テナント
- Antler、Entrepreneur First などのVC型アクセラレータ
EntrePass の有効期限と更新サイクル
- 初回発行: 1年
- 1回目更新: さらに1年(合計2年)
- 2回目以降の更新: 各2年
更新時には事業実績(マイルストーン)の達成が問われます。たとえば:
- 1回目更新:従業員雇用、売上、追加資金調達などの一定基準
- 2回目以降:年間総支出S$100,000以上、ローカル雇用3人以上、など
つまりEntrePass は「とりあえず取れる」が、事業を実際に育てないと更新で落とされる仕組みです。会社が動かないままだと2年で出国することになります。
EntrePass 申請の流れ|会社設立から発行まで
- シンガポールでPrivate Limited Company(Pte. Ltd.)を設立(ACRA登録、最低資本金 S$1)
- 申請者本人が30%以上の株式を保有することが必要
- 事業計画書(Business Plan)作成 — 30ページ程度の英文
- 資金調達証明(VC/エンジェル投資家の契約書、銀行残高証明など)
- MOM EP Online から申請(申請料 S$105)
- 審査期間 8週間〜3ヶ月(事業計画の精査が入るため長め)
- 承認後 IPA letter 発行 → SG入国 → ICAでカード発行(S$225)
会社設立は ACRA 公式の Bizfile+ ポータルでオンライン完結します。1日で会社が作れますが、Resident Director(シンガポール居住の取締役)を1人立てる必要があるので、現地のCorporate Service Provider(年S$2,000〜程度)を使うのが一般的です。
正直に言うと、EntrePass は「取れた後が本番」のビザです。私の周りでも、初年度は順調でも更新時に事業マイルストーンを満たせず帰国した方を何人か見ています。事業計画書だけ立派でも、実態が伴わないと2年で出国することになるので、申請前に「この事業を本気で続ける覚悟があるか」を自問するのが先かもしれません。
必要書類リスト
- パスポート(残存6ヶ月以上)
- 履歴書(英文)
- 事業計画書(30ページ程度):マーケット分析、競合、収益モデル、3年計画、必要資金
- 会社のACRA Bizfile(株主・役員情報)
- 資金調達証明(VC契約・銀行残高)
- 知的財産証明(特許・商標、該当する場合)
- 過去の起業実績証明(履歴書・レター)
- シンガポールの居住地証明
事業計画書はEntrePass審査の最重要書類です。「シンガポールでこの事業を運営する必要性」「ローカル雇用の創出」「政府の戦略的セクター(Tech・FinTech・Bio・GreenTech・MedTech)との適合性」をしっかり書き込むのがポイント。
EntrePass vs Tech.Pass vs ONE Pass|どれを選ぶ?
| パス | 給与要件 | 主な対象 | 有効期間 | 家族呼寄 |
|---|---|---|---|---|
| EntrePass | なし | 起業家・投資家・革新者 | 1+1+2年 | ○ DP/LTVP |
| Tech.Pass | 過去S$22,500/月 | テック幹部・専門家 | 2+2年 | ○ DP/LTVP |
| ONE Pass | S$30,000/月 | 最上位人材 | 5年 | ○ DP/LTVP |
選び方の目安:
- これから起業する+資金調達できる: EntrePass
- すでに高給テック幹部経験あり: Tech.Pass(複数雇用主・経済活動可)
- 過去にS$30,000以上稼いだ実績あり: ONE Pass(5年・最強の自由度)
よくある質問(FAQ)
Q1. 個人事業主・SoleProprietor でも EntrePass 取れる?
取れません。EntrePass はPrivate Limited Company(Pte. Ltd.)の株主・取締役であることが前提です。Sole Proprietor や Partnership は対象外。シンガポール会社設立は1日で完了するので、申請前に必ずPte.Ltd.化しておきましょう。
Q2. 自己資金だけで起業しても EntrePass 取れる?
難しいです。自己資金(Bootstrap)だけだと「Entrepreneur」カテゴリのS$100,000資金調達要件は満たせず、「Innovator」「Investor」「Accelerator」のいずれかのルートに該当する必要があります。最も現実的なのは政府認定アクセラレータに参加することです。
Q3. EntrePass 保持中の家族は呼べる?
呼べます。EntrePass holder で月給S$6,000以上を自分の会社から受け取っていれば、配偶者・21歳未満の子をDP(Dependant Pass)で呼び寄せられます。月給S$12,000以上で親もLTVPで呼べます。詳しくはDP/LTVP完全ガイドをご覧ください。
Q4. EntrePass の事業計画書は誰が書くべき?
申請者本人が書くのが基本ですが、英語が苦手なら現地のビジネスコンサルタント(弁護士事務所・会計事務所のCorporate Service部門)の添削サポートを使うのが一般的。費用はS$2,000〜S$5,000程度。「EntrePass取得を保証します」と言う代行業者は詐欺の可能性があるので、Law Society登録の正規法律事務所のみ使ってください。
Q5. EntrePass からPRに切り替えできる?
できます。EntrePass で2〜3年事業を運営し、ローカル雇用・売上実績ができていれば、PR申請が現実的になります。事業の収益性・雇用創出が高評価対象です。PR申請ガイドもあわせて参照してください。
まとめ|起業家にとってのシンガポール最強ルート
- 給与要件なしの起業家向けパス
- 4カテゴリ(Entrepreneur / Innovator / Investor / Accelerator)のいずれかでOK
- 初回1年→1年→2年→2年…のマイルストーン更新サイクル
- 会社はPte.Ltd.必須、申請者30%以上株式保有
- 事業計画書が審査の鍵
- 家族(配偶者・子・親)も同時に呼び寄せ可能
シンガポールはアジアで最も起業家フレンドリーな国の1つで、税制・規制・物流・人材すべてにおいてスタートアップに有利です。資金調達のあてがあれば、EntrePassは日本からシンガポールへの起業移住で最も現実的な選択肢になります。シンガポールビザ全体の比較はシンガポールのビザ種類を徹底比較でまとめています。
※本記事は2026年4月時点のMOM公式情報を元に作成しています。最新の要件はMOM公式EntrePassページでご確認ください。本記事は法律相談・税務相談を提供するものではありません。
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