シンガポールで不動産購入|ビザ別の制限・税金・費用を徹底解説
シンガポールに移住して「いつかはこっちで家を買いたい」と思い始めたのは、賃貸の更新時期が近づいたタイミングでした。毎月SGD 3,000以上の家賃を払い続けるなら、購入した方が得なのでは?と。
調べ始めて最初に衝撃を受けたのがABSD(Additional Buyer’s Stamp Duty=追加印紙税)の存在です。外国人がシンガポールで不動産を買うと、物件価格の60%が税金として上乗せされます。SGD 200万(約2.3億円)のコンドミニアムなら、ABSDだけでSGD 120万(約1.4億円)。冗談みたいな金額ですが、本当です。
ただし、この税率はビザステータスによって劇的に変わります。PR(永住権)を持っていれば1軒目は5%。シンガポール市民なら0%。つまり、「いつ・どのステータスで買うか」で数千万円の差が出る。この記事では、ビザ別の制限・税金・費用・購入の流れをまとめます。
結論:PR取得後に買うのが圧倒的に有利
結論から言うと、シンガポールで不動産を買うなら、PR(永住権)を取得してからがベストです。理由は単純で、ABSDの差が大きすぎるから。
SGD 200万のコンドミニアムを買う場合のABSD比較:
| ビザステータス | ABSD税率(1軒目) | ABSD金額 | 日本円換算 |
|---|---|---|---|
| シンガポール市民 | 0% | SGD 0 | 0円 |
| PR(永住権保持者) | 5% | SGD 100,000 | 約1,150万円 |
| 外国人(EP/S Pass等) | 60% | SGD 1,200,000 | 約1億3,800万円 |
外国人とPRの差はSGD 110万(約1.3億円)。これだけの金額差があるなら、PR取得を待ってから購入する方が賢明です。EPで2〜3年働いてPRを取得し、それから購入するのが最もコスパの良いルートです。
ちなみに、アメリカ・スイス・リヒテンシュタイン・ノルウェー・アイスランド国籍の方は、FTA(自由貿易協定)によりシンガポール市民と同じABSD率が適用されます。該当する方はかなり有利です。
ビザ別:買える物件タイプ早見表
シンガポールでは、ビザステータスによってそもそも買える物件の種類が違います。
| 物件タイプ | 市民 | PR | 外国人(EP等) |
|---|---|---|---|
| HDB(公営住宅)新築BTO | ✅ | ❌ | ❌ |
| HDB リセール | ✅ | ✅(条件あり) | ❌ |
| コンドミニアム | ✅ | ✅ | ✅ |
| EC(10年以上) | ✅ | ✅ | ✅ |
| EC(10年未満) | ✅ | ✅ | ❌ |
| ランデッド(一戸建て) | ✅ | ⚠️ SLA許可 | ⚠️ SLA許可 |
外国人が買えるのは基本的にコンドミニアムだけ
外国人(EP・S Pass・DP保持者含む)が自由に購入できるのはコンドミニアム(民間マンション)のみ。HDB(公営住宅)は完全に対象外です。
HDBが買えないのは大きい。シンガポールの住宅の約80%はHDBで、価格もコンドの半額以下。市民やPRがHDBを買えるのは大きなアドバンテージです。
PRがHDBリセールを買う条件
PRの場合、新築BTO(Build-To-Order)は買えませんが、リセールHDBは以下の条件を満たせば購入可能です:
- PR取得から3年以上経過
- 配偶者・子ども・親と共同申請
- 保有する民間物件は購入前30ヶ月以内に売却が必要
ランデッド(一戸建て)はほぼ無理
ランデッド物件(テラスハウス・セミデタッチ・バンガロー)は、外国人・PRともにSLA(シンガポール土地管理局)の許可が必要です。審査は厳しく、PR5年以上・シンガポール経済への貢献度などが問われます。唯一の例外がセントーサコーブで、外国人でも比較的許可が下りやすいエリアです(ただしABSD 60%は変わりません)。
ABSD(追加印紙税)の全体像
ABSDはシンガポール不動産購入で最大のコスト要因です。2023年4月の改定で外国人向けが30%→60%に倍増し、大きな話題になりました。
| ステータス | 1軒目 | 2軒目 | 3軒目以降 |
|---|---|---|---|
| シンガポール市民 | 0% | 20% | 30% |
| PR(永住権) | 5% | 30% | 35% |
| 外国人 | 60% | 60% | 60% |
| 法人・信託 | 65% | 65% | 65% |
外国人は何軒目であろうと一律60%。市民は1軒目なら0%で、2軒目の投資用から20%がかかる設計です。シンガポール政府は「外国人の投機的購入を抑制し、市民の住宅購入を守る」という明確な意図でこの税率を設定しています。
BSD(通常の印紙税)の計算方法
ABSDとは別に、全員に課されるBSD(Buyer’s Stamp Duty)があります。これは累進課税です。
| 物件価格帯 | 税率 |
|---|---|
| 最初のSGD 180,000 | 1% |
| 次のSGD 180,000 | 2% |
| 次のSGD 640,000 | 3% |
| 次のSGD 500,000 | 4% |
| 次のSGD 1,500,000 | 5% |
| SGD 3,000,000超 | 6% |
計算例:SGD 200万のコンドミニアム
- SGD 180,000 × 1% = SGD 1,800
- SGD 180,000 × 2% = SGD 3,600
- SGD 640,000 × 3% = SGD 19,200
- SGD 500,000 × 4% = SGD 20,000
- SGD 500,000 × 5% = SGD 25,000
- BSD合計 = SGD 69,600(約800万円)
BSDは全員同じですが、ここにABSDが上乗せされることで外国人の負担が跳ね上がります。
費用シミュレーション:SGD 200万のコンドを買う場合
実際にSGD 200万(約2.3億円)のコンドミニアムを購入した場合の総費用を、ビザ別にシミュレーションしてみます。
| 費用項目 | 市民(1軒目) | PR(1軒目) | 外国人 |
|---|---|---|---|
| 物件価格 | SGD 2,000,000 | SGD 2,000,000 | SGD 2,000,000 |
| BSD | SGD 69,600 | SGD 69,600 | SGD 69,600 |
| ABSD | SGD 0 | SGD 100,000 | SGD 1,200,000 |
| 弁護士費用 | SGD 3,000 | SGD 3,000 | SGD 5,000 |
| 仲介手数料(買主側) | SGD 0〜20,000 | SGD 0〜20,000 | SGD 0〜20,000 |
| 購入時総費用 | SGD 2,072,600〜 | SGD 2,172,600〜 | SGD 3,274,600〜 |
| 日本円換算 | 約2.4億円 | 約2.5億円 | 約3.8億円 |
外国人だと物件価格の約1.6倍の支払いになります。SGD 200万の物件にSGD 327万払う計算。正直、この税率で買う外国人は超富裕層か、よほどの理由がある人に限られます。
住宅ローンの制限
シンガポールでは住宅ローンにも厳格な規制があります。
LTV(ローン・トゥ・バリュー)比率
| ステータス | 1軒目 | 2軒目 | 3軒目以降 |
|---|---|---|---|
| 市民・PR | 最大75〜80% | 45% | 35% |
| 外国人 | 60〜70% | 同左 | 同左 |
外国人の場合、銀行によって60〜70%と幅があります。SGD 200万の物件なら最低SGD 60万〜80万(約7,000万〜9,200万円)の頭金が必要です。
頭金を日本から送金する場合は、銀行の海外送金だと手数料が数十万円になることも。送金手数料の比較をしっかりしておくことをおすすめします。
TDSR(総返済比率)55%ルール
シンガポールではMAS(金融管理局)が定めるTDSR 55%ルールが適用されます。毎月の全借入返済額(住宅ローン・車・クレカ・個人ローン含む)が月収の55%を超えてはいけません。
銀行はストレステスト金利(2026年現在4%前後)で審査するので、実際の借入可能額は想像より少なくなります。
不動産購入の流れ(8ステップ)
全体で約3〜4ヶ月かかります。
ステップ1:事前審査(ローンIPA取得)
まず銀行からIn-Principle Approval(IPA)を取得します。これは「この金額まで貸せますよ」という仮承認。物件探しの前にやっておくと交渉がスムーズです。通常3〜5営業日で取得できます。
ステップ2:物件探し・内覧
PropertyGuruやSRX等のポータルサイトで探すのが一般的。エージェント(不動産仲介)を付けると非公開物件も紹介してもらえます。エリア選びは賃貸エリアガイドも参考にしてください。購入と賃貸で人気エリアはほぼ同じです。
ステップ3:OTP(Option to Purchase)取得
購入する物件が決まったら、売主にOption Fee(通常物件価格の1%)を支払い、OTP(購入オプション)を取得します。この時点で14日間の検討期間が始まります。
ステップ4:弁護士による法的調査
シンガポールの弁護士に依頼して、物件の権利関係・テナント状況・建物の問題等を調査します。費用はSGD 2,500〜5,000程度。外国人の場合はやや高くなる傾向があります。
ステップ5:OTP行使・頭金支払い
14日以内にOTPを行使し、追加のデポジット(物件価格の4%、合計5%)を支払います。この5%は現金のみ(CPF不可)。残りの20%はCPFまたは現金で支払います。
ステップ6:印紙税の支払い
OTP行使から14日以内にIRAS(内国歳入庁)へBSD+ABSDを支払います。外国人の場合、ここで物件価格の約63%を税金として払うことになります。期限を過ぎるとペナルティが発生するので要注意。
ステップ7:銀行のローン確定・物件鑑定
銀行が物件の鑑定を行い(1週間程度)、正式なローン承認が出ます。鑑定額が購入価格を下回った場合は、差額を現金で補填する必要があります。
ステップ8:完了・鍵引き渡し
OTP行使から約8〜12週間後に取引が完了。弁護士がSLA経由で電子的に所有権を移転し、鍵を受け取ります。
よくある質問(FAQ)
Q: EPで働いているうちに買うべき?PRを待つべき?
A: 特別な事情がない限り、PR取得を待つべきです。ABSD 60%と5%の差は何千万円にもなります。EPからPRへの申請は通常2〜3年の勤務実績があれば可能で、審査期間は6〜12ヶ月。ビザの種類と条件は別記事で詳しくまとめています。
Q: 外国人でもローンは組める?
A: はい、組めます。ただしLTV(借入可能額)は60〜70%で、市民・PRの75〜80%より低くなります。シンガポールでの安定収入があれば、DBS・OCBC・UOBなどの地元銀行でローン審査が可能です。
Q: 購入した物件を賃貸に出せる?
A: コンドミニアムなら可能です。多くの外国人オーナーが投資目的で購入し、賃貸に出しています。ただしランデッド物件(SLA許可で購入した場合)は自己居住のみで賃貸不可です。
Q: 購入後にシンガポールを離れたらどうなる?
A: コンドミニアムなら所有し続けられます。非居住者になっても売却義務はありません。賃貸に出して家賃収入を得ることも可能です(非居住者の家賃収入には22%の源泉所得税がかかります)。⚠️ 要確認: 非居住者の不動産所得税率
Q: 日本のローンで買える?
A: 日本の銀行のローンでシンガポールの不動産を買うのは非常に難しいです。基本的にはシンガポール現地の銀行でローンを組むことになります。頭金や諸費用を日本から送金する場合は送金サービスの手数料比較を確認してください。数千万円単位の送金では手数料の差が大きくなります。
Q: 売却時の税金は?
A: シンガポールにはキャピタルゲイン税がないため、値上がり益に対する課税はありません。ただし、購入から3年以内に売却するとSSD(Seller’s Stamp Duty)が最大12%かかります。長期保有なら売却時の税負担はゼロです。
まとめ
シンガポールの不動産購入で一番大事なのは「いつ買うか」よりも「どのステータスで買うか」です。
- 外国人(EP/S Pass):ABSD 60% → 超富裕層以外は現実的でない
- PR(永住権)1軒目:ABSD 5% → 現実的。PR取得後に購入がベスト
- 市民1軒目:ABSD 0% → 最も有利
- 買えるのは基本コンドのみ。HDBは市民・PR限定
- ローンは外国人でも可能だが、LTV 60〜70%で頭金が多く必要
- キャピタルゲイン税なし(3年以上保有の場合)
移住してすぐに家を買いたい気持ちはわかりますが、ABSDの差額を考えると、まずは賃貸で住みながらPRを取得し、それから購入を検討する方が圧倒的に賢い選択です。
シンガポールのホテル・宿泊
Klook.com※本記事の情報は執筆時点のものです。制度・価格は変更される場合があります。最新情報は各公式サイトをご確認ください。

コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 特に大きいのが不動産購入時のABSD。外国人は60%の追加税がかかるのに対し、PRなら初回購入でたった5%。例えば、S$1,500,000(約1.7億円)のコンドミニアムを買う場合、外国人ならABSDだけでS$900,000。PRならS$75,000。その差はS$825,000(約9,000万円)です。シンガポールでの不動産購入を少しでも考えているなら、先にPRを取るのが絶対の鉄則です。 […]