シンガポールTech.Pass完全ガイド|エンジニア・テック幹部のための2026年版

Tech.Pass 完全ガイド 2026 のアイキャッチ画像

結論から言うと、シンガポールのTech.Passは、テック分野の経験豊富な人材(CTO・テクニカルリード・起業家など)が「複数の会社で同時に働ける」「起業もできる」「家族も呼べる」最強のテック特化ビザです。申請窓口・審査はEDB(経済開発庁)が担当していますが、EDBはMOM(人材省)に代わってこの制度を運営しており、承認後のIPAレターの発行やパスの発給はMOMが行います。

過去1年で固定月給S$22,500以上に加えて、テック企業またはテックVCでの5年以上のリーディングロール経験の両方を満たすことでQualifyします。給与基準ではONE Pass(S$30,000)より低く、自由度はEPより高い「中間層トップ」のポジションです。

※2026年8月時点、出典:シンガポール経済開発庁(EDB)公式サイト「Tech.Pass」/シンガポール人材省(MOM)

ここからは、Tech.Passの取得基準、5つの経済活動許可、申請手順、Tech.Pass特有のメリットまでまとめます。

目次

Tech.Pass の取得基準|給与+経験の両方が必要

Tech.Pass は「給与基準」と「経験基準」の両方(AND条件)を満たす必要があります。制度開始時(2021年)には「3つの基準のうち2つ以上」という運用がありましたが、現行のEDB公式ページでは給与基準と経験基準の両方を満たすことが条件とされています。

基準①:給与(過去の Last Drawn Salary)

申請日前の最終職で、固定月給S$22,500以上を1年以上受け取った実績があること。原則は固定給のみが対象ですが、非現金報酬を含む他の収入源がある候補者・事業オーナーについては、EDBがケースバイケースで考慮するとされています。

基準②:リーダーシップ経験

申請日から過去10年以内に、以下いずれかで累計5年以上のリーディングロール経験があること。

  • 評価額・時価総額US$500M以上、またはUS$30M以上の資金調達を行ったテック企業でのリーディングロール
  • 運用資産(AUM)US$500M以上のテックVCでのリーディングロール

CTO、VP Engineering、CEO of tech startup などのポジションを想定した基準です。

(参考)2021年の制度開始時に存在したプロダクト実績基準

制度開始時(2021年)には、累計5年以上テックプロダクトの開発・主導経験があり、そのプロダクトが以下のいずれかを達成していることが基準の一つとして設けられていました。ただし2026年8月時点のEDB公式Tech.Passページにはこの基準は掲載されておらず、経験ルートはテック企業・テックVCでのリーディングロール経験(基準②)に一本化されているとみられます。申請を検討する場合はEDB公式ページで最新の運用をご確認ください。

  • 月間アクティブユーザー(MAU)100,000以上
  • 年間収益US$100M(約150億円)以上(為替レートにより変動)

具体例:Wise、Carousell、Grab、ByteDance、Stripe、Notion などの主要テック企業のシニアエンジニアやプロダクトリードは、現行の基準②(評価額US$500M以上等のテック企業要件)を満たす例として該当し得ます。

※2026年8月時点、出典:シンガポール経済開発庁(EDB)公式サイト「Tech.Pass」「Apply for a Tech.Pass」

Tech.Pass の最強メリット|5つの経済活動が許可

Tech.Pass保持者は、シンガポール内で以下5つの経済活動を並行して行えます。EPと比べて圧倒的に自由度が高い点です。

  1. テック企業を立ち上げ・経営する(株主、CEO、Director など)
  2. シンガポールの会社に雇用される(複数の会社で並行就労OK)
  3. シンガポール会社の取締役を務める(複数社の Board Member)
  4. 大学・研究機関の客員講師として活動する(NUS、NTU、SMU、SUTD など)
  5. シンガポールスタートアップへの投資・メンタリング(VC、Angel、Advisor)

※2026年8月時点、出典:シンガポール経済開発庁(EDB)公式サイト「Tech.Pass」

つまり Tech.Pass は「テックスター人材がシンガポールに来て自由に動ける」ように設計されたパスです。EP では原則できない複数雇用・起業・取締役兼任(Letter of Consentがなければ不可)が、Tech.Pass なら全部OK。なお、投資(株主としての出資)自体はEP保有者でも可能です。

Tech.Pass 申請の流れ|EDB主導

  1. EDBの申請書(本人用・扶養家族用)をダウンロードし、署名のうえ支払参照番号を取得(申請窓口はMOMではなくEDB)
  2. 必要書類とともにオンライン提出フォーム(FormSG)でアップロード:パスポート、過去の雇用証明、給与証明、テック企業/テックVCでの役職・実績を示す資料(メディア記事・公式発表など)
  3. 申請料 S$105(IPA発行料は含まれず、発給時にパス1件につきS$225が別途必要)
  4. EDBによる審査:目安は約8週間。追加情報を求められた場合はさらに長期化することがあります
  5. 承認後 IPA letter 発行(IPA受領から6ヶ月以内に発給を受ける必要があり、延長は認められません)
  6. シンガポール入国 → 予約のうえMOM Employment Pass Services Centreで本人がパス発給を受ける(S$225)

※2026年8月時点、出典:シンガポール経済開発庁(EDB)公式サイト「Apply for a Tech.Pass」/シンガポール人材省(MOM)

EDB はシンガポール政府の経済開発機関で、外資誘致・スタートアップ支援を担当しています。申請前にシンガポールでの就職を確保する必要はなく、雇用主のスポンサーなしで個人が申請できる点も大きな特徴です。テック人材を呼び寄せたいシンガポール政府の意図が反映された制度といえます。

必要書類リスト

  • パスポート
  • 履歴書・LinkedIn(英文)
  • 過去の雇用証明・給与明細(給与基準の裏付け)
  • テック企業/テックVCでの役職・実績を証明する資料:メディア記事、公式発表など
  • 役職を証明する公式組織図
  • 研究実績:論文(該当する場合)
  • シンガポールでの活動計画(EDB公式の必須要件ではありませんが、準備しておくと望ましい資料です)

※2026年8月時点、出典:シンガポール経済開発庁(EDB)「Documents required for Tech.Pass application」

「シンガポールでの活動計画」がEPと違うところ。「来たらこういう活動をする」を明確に書くと審査の参考になります。複数雇用・起業・投資のどれをやるのか、計画レベルでも記載しましょう。

Tech.Passは「複数の収入源を持ちたいシニアエンジニア」に向いている制度だと言えます。本業の所属会社に縛られず、副業・コンサル・スタートアップ立ち上げを並行できるのが他のEPと決定的に違う点です。また、雇用主のスポンサーなしで個人が申請できる点も特徴です。ただし更新時には「シンガポールで実際に何を作ったか」という実績が問われるため、肩書きだけで取得すると更新のタイミングで審査が厳しくなる可能性がある点には注意が必要です。

Tech.Pass の更新条件|2年→2年延長

Tech.Pass は初回2年、満了時に2年延長が可能(合計4年)。延長は新規申請ではなく更新扱いです。延長条件は以下のいずれかを満たすこと。

  • IRAS発行の最新Notice of Assessmentに基づく課税所得がS$270,000以上(給与・事業所得の合算可)
  • 年間事業支出S$100,000以上、かつ現地PME(月給S$3,900以上・CPF拠出3ヶ月以上のシンガポール人/PR)1名、またはLQS要件を満たす現地従業員3名を雇用
  • シンガポールでデジタル・技術製品を中核とする法人を設立し、過去36ヶ月で累計US$10M超の投資を受け、かつプログラム認定投資会社からの出資を受けている

※2026年8月時点、出典:シンガポール経済開発庁(EDB)公式「Renew my Tech.Pass」/IRAS(NOA)。なおLQS(現地従業員要件)の下限は2026年7月1日からS$1,600→S$1,800に引き上げられています。

延長後の4年が満了したら、ONE Pass・EP・PR申請のいずれかへ移行する必要があります。Tech.Pass保有者はICAが運用するPTS(Professionals/Technical Personnel & Skilled Workers)スキームでPR申請が可能ですが、Tech.Pass保有そのものがPR取得を保証するものではなく、通常のICA審査を受ける必要があります。

※2026年8月時点、出典:シンガポール人材省(MOM)/シンガポール移民局(ICA)

Tech.Pass vs EP vs ONE Pass|エンジニア視点で比較

Tech.PassEPONE Pass
給与要件S$22,500/月(過去)S$5,600/月〜S$30,000/月
有効期間2+2年2〜3年5年
複数雇用○×○
起業○×○
取締役兼任○×(LOC必要)○
大学講師○×○
投資・メンタリング○△(株主としての投資は可、メンタリング等の労働は不可)○
家族呼寄○ DP/LTVP○ DP(条件あり)○ DP/LTVP
運営機関EDBMOMMOM

※2026年8月時点、出典:シンガポール人材省(MOM)公式サイト(Employment Pass、Overseas Networks & Expertise Pass、Letter of Consent制度)/Budget 2026発表

選び方の目安:

  • 過去にS$30,000以上の実績あり: ONE Pass(5年・自由度最強)
  • テック幹部経験あり、S$22,500〜S$29,999: Tech.Pass(2+2年でも充分)
  • 1社専属で働く・給与S$5,600〜S$22,499: EP
  • シンガポールで起業する: EntrePass(給与不問・EntrePass記事。※EntrePassの適格基準は本記事では未検証のため、詳細はEDB/MOM公式でご確認ください)

※2026年8月時点、出典:シンガポール人材省(MOM)

よくある質問(FAQ)

Q1. テック企業の定義は?

EDBの基準では、Software/SaaS/FinTech/HealthTech/GreenTech/DeepTech/AI/Blockchain/IoT/Cybersecurity などの分野で、収益・調達額・ユーザー規模などから「テック企業」とみなされる会社。Google、Meta、Amazon、Stripe、Notion、Wise、Grab といった主要企業はもちろん、評価のあるスタートアップも含まれます。

Q2. 中小スタートアップでの経験は認められる?

現行のEDB基準では、経験ルートは「評価額・時価総額US$500M以上またはUS$30M以上の資金調達を行ったテック企業」または「AUM US$500M以上のテックVC」でのリーディングロール経験に限られます。そのため、中小規模のスタートアップでの経験がそのまま認められるわけではなく、在籍した企業がこれらの定量基準を満たしているかがポイントになります。ユニコーンを育てた起業家やExit経験者などは、勤務先企業の評価額・調達額を証明する資料を用意することで該当しやすくなります。

Q3. Tech.Pass は「縮小される」と聞いた

シンガポール人材省(MOM)は2026年3月3日のCommittee of Supply(COS 2026)で、2027年1月に「ONE Pass(AI and Tech)トラック」を新設し、Tech.Passを置き換えると発表しました。新トラックは初回5年・5年ごとの更新となる見込みです。2026年8月時点でTech.Passの新規申請は引き続き受付中ですが、EDBは申請の最終締切日を公表していません。今後の詳細な適格基準はMOMが公表予定のため、申請を検討する場合はEDB・MOM公式の最新情報を必ず確認してください。

※2026年8月時点、出典:シンガポール人材省(MOM)「Factsheet on Foreign Workforce Policy Announcements at COS 2026」(2026年3月3日)

Q4. 配偶者・子供は連れていける?

はい、Tech.Pass holder は EP と同様に配偶者・21歳未満の子をDPで呼び寄せできます。Tech.Pass の給与水準は基本的にDP sponsor のS$6,000要件を超えるため、家族呼び寄せは問題ありません。詳しくはDP/LTVP完全ガイドを参照してください。

※2026年8月時点、出典:シンガポール経済開発庁(EDB)/シンガポール人材省(MOM) Dependant’s Pass規定

Q5. 日本のIT大手社員でも取れる?

給与基準(過去S$22,500/月=年俸ベースでS$270,000程度)と経験基準を満たせば取得可能です。2026年8月時点のレート(1SGD≒125円)で換算すると、月給は約281万円、年収換算では約3,375万円に相当します(為替により変動するため目安としてご参照ください)。外資テック日本法人のシニア・幹部クラス、もしくは日系大手のVP・本部長クラスが現実的なラインといえます。

※2026年8月時点、出典:シンガポール経済開発庁(EDB)/Investing.com(為替レート、為替は変動)

まとめ|テック人材のシンガポール移住パス

  • 過去給与S$22,500/月の給与基準に加え、テック企業またはテックVCでの5年以上のリーディングロール経験(経験基準)の両方を満たす
  • 有効期間2年+2年延長(合計最大4年)
  • 複数雇用・起業・取締役兼任・大学講師・投資の5つの経済活動すべてOK
  • 申請料 S$105 + 発行料 S$225(合計S$330)
  • EDB主導の審査でMOMより柔軟
  • 家族(DP/LTVP)も同時に sponsor 可能

※2026年8月時点、出典:シンガポール経済開発庁(EDB)公式「Apply for a Tech.Pass」

Tech.Pass はシンガポールが「世界中のテック人材を集めたい」という意思で2021年に作った制度で、現在も主要なテック移住ルートの1つです。給与基準と経験基準の両方を満たせれば、EPより圧倒的に自由度が高い選択肢として検討の価値があります。ただし2027年1月にはONE Pass(AI and Tech)トラックへの置き換えが予定されているため、最新動向の確認が欠かせません。シンガポールビザ全体の比較はシンガポールのビザ種類を徹底比較でまとめています。

※本記事は2026年8月時点のEDB・MOM公式情報を元に作成しています。なお、MOMは2026年3月3日のCOS 2026で、2027年1月にTech.PassをONE Pass(AI and Tech)トラックへ置き換えると発表しています。最新の要件はEDB公式 Tech.Passページでご確認ください。本記事は法律相談・税務相談を提供するものではありません。

シンガポールのホテル・宿泊

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この記事を書いた人

夫の駐在に帯同してシンガポール在住2年以上。未就学児1人・小学生1人(どちらも女の子)を育てる駐在妻。学校選び・インター校事情・駐在妻コミュニティ・国内みどころなど、子連れ目線のリアルを発信。

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